再発防止策は『原因』に打つ|「いつもと何が違った?」と聞いた日

朝いちばん、パソコンで1通の報告書を開きました。お弁当に主食が入っていない状態で園に届いてしまった件の『再発防止策』です。

読み終えた瞬間、私の中で小さな警報が鳴りました。(いや、ちょっと待って。この対策、本当に回るか?)

再発防止策を立てたのに、似たようなミスがまた起きる。そんな経験、ありませんか。私は何度もあります。

今回あらためて思ったのは、再発防止策は『起きたこと』に打つものではなく、『原因』に打つものだということです。言葉にすると当たり前なのですが、これが本当に難しい。

この記事では、私が実際に再発防止策を差し戻したときの話と、そこから考えたことを書きます。
・『起きたこと』への対策と『原因』への対策は何が違うのか
・原因にたどり着くために、私がいつも使っている問い
・原因に対策を打てているか、私が見るようにしていること

再発防止策が『起きたこと』への対策になっていた

私は中小企業で、食品工場の管理をしている会社員です。今回の件は、幼稚園向けのお弁当で、ご飯などの主食が入っていないまま園に届いてしまったというものでした。園から連絡を受け、その工場の事業部長がその日のうちに園へ伺い、謝罪しています。

原因の報告はこうでした。最後に数を合わせるための少量の製造で、検品する人が決まっておらず、検品されないまま出荷されてしまった。

そして翌日から、新しいルールが始まっていました。『この製造のときの検品者は、盛り付けをした人とは別の人にする』。

一見、正しい対策です。私も最初は(なるほど)と思いかけました。でも、すぐに引っかかりました。(その『別の人』、毎回都合よくその場にいるか?)

よく考えると、この対策は『検品されなかった』という起きたことに、そのままフタをしているだけでした。なぜその日は検品が抜けたのか、というところには手が届いていません。人が足りない日ほど『別の人』はいないので、いちばん危ない日にいちばん効かない対策になってしまう。そう考えました。

『いつもは起きない』ミスには、いつもと違う何かがある

もう一つ気になったのが、この工場ではこれまで、この種のクレームがほとんど出ていなかったことです。現場の事務員に聞いても、久しぶりのことだという話でした。

毎日のように起きるミスなら、やり方そのものに穴があるのかもしれません。でも、普段は起きないミスが起きたのなら、その日だけ何かが違ったはずです。人の配置なのか、作業の順番なのか、注文の数なのか。

そこを見ないまま検品のルールだけ足しても、本当の原因はそのまま残ります。そしてまた、別の形で顔を出す。私自身、そういう『もぐらたたき』を何度もやってきました。

「考えさせたい」――答えを言わずに差し戻した理由

正直に書くと、頭の片隅には、この工場でしばらく前から続いていた人手不足のことがありました。(たぶん、あそこだよな…)と、答えが喉元まで出かかっていました。

私が「原因はこれ、対策はこう」と決めてしまえば、話は5分で終わります。でも、それは私が答えを持っていっただけで、事業部長が原因にたどり着いたことにはなりません。

だから自分で決めずに、差し戻しました。あとでこのときの気持ちを聞かれて、私はこう答えています。

「考えさせたい」

「いつもは起きないトラブルが起きた時、いつもとなにが違ったのか?を考えるように指導してるからね!」

――と、かっこよく書いていますが、実は私もできていません。その週の振り返りで、私は自分の悪い点として『全ての判断において部下に考えさせるような判断が少なすぎる』と書いています。(人に言う前に、まず自分だろ)と、心の中で自分にツッコミを入れました。

差し戻したあと、事業部長と面談して整理した結論は2つです。当面は、その製造のときに第三者を検品者に置いて必ず検品する。そして根本の対策は、人員を補充すること。検品が抜けた手前には、人が足りずに作業が詰まっていたという原因がありました。

再発防止策は『起きたこと』ではなく『原因』に打つ

この件で、私がいちばん言いたいのはここです。

ミスが起きると、私たちはつい『起きたこと』に対策を打ちたくなります。抜けたならチェックを増やす。間違えたなら注意する。見落としたなら確認者を足す。どれも間違いではないし、すぐにできるので安心もします。

でも、それは起きたことの裏返しを置いているだけで、『なぜそれが起きたのか』には何も手を打っていないことが多いんです。原因が残っている限り、ミスは形を変えてまた出てきます。

たとえば、書類の提出漏れが出たときに『提出前にもう1人チェックする』と決めても、漏れた理由が『締め切りが急に変わったことが伝わっていなかった』なら、本当に直すべきは伝わり方のほうです。食品工場でも事務の仕事でも、ここは同じだと思います。

だから私は、対策を見るときに1つだけ自分に聞くようにしています。(これは『起きたこと』への対策か、それとも『原因』への対策か?)

もちろん、お客様に関わることなら、起きたことへの応急処置はすぐに打ちます。今回も、当面の検品体制はその場で決めました。大事なのは、応急処置で終わりにせず、原因への対策まで必ずたどり着くことだと思っています。

原因に対策を打てているか、私が見るようにしていること

えらそうなことは言えませんが、部下から再発防止策が上がってきたとき、私が見るようにしていることを書いておきます。私もいつも全部できているわけではないので、自分への戒めも込めて。

✅ その対策は『起きたこと』の裏返しになっていないか
✅ 「いつもと何が違った?」を確かめたか(人・設備・材料・やり方)
✅ その対策は、人が足りない日・忙しい日にも回るか
✅ 応急処置と、原因への対策を分けて考えているか

差し戻すときは、答えではなく問いを1つだけ渡すようにしています。私の場合は「いつもと何が違った?」です。問いが短いほど、相手が自分の頭で現場を思い出してくれる気がします。

伝え方については、以前『部下に指示が伝わらない原因は『目的』の抜け|伝わる指示3つのコツ』でも書きました。人の配置の考え方は『製造工場管理における「四大要素」とは?適正人員配置の重要性を解説』にまとめています。

よくある質問

ダブルチェックを増やすのは、意味がないのですか?

意味はあると思います。応急処置としてはとても大事です。ただ、それだけで終わると原因が残ります。チェックを増やしたあとに『そもそも、なぜ抜けたのか』まで考えられているかを、私は気にするようにしています。

原因を考えさせると時間がかかります。急ぎのときはどうしていますか?

お客様に関わる応急処置は、私もその場で決めます。考えてもらうのは、原因と根本の対策のほうです。急ぐ部分と、時間をかけて考える部分を分けると、少し楽になりました。

「いつもと何が違った?」と聞いても、答えが出てこないときは?

人・設備・材料・やり方の4つに分けて、「人の配置はいつもどおりだった?」のように1つずつ聞くと、思い出しやすいようです。それでも出なければ、一緒に現場を見に行くのがいちばん早いと感じています。

まとめ

✅ 再発防止策は『起きたこと』ではなく『原因』に打つ
✅ 普段は起きないミスには、『いつもと違った何か』があるはず
✅ 応急処置はすぐ打つ。でもそこで終わりにしない
✅ 差し戻すときは、答えではなく問いを1つだけ渡す

前回は『食品工場の本部長が、AIを「右腕」にした最初の2週間』で、苦手な報連相をAIで補った話を書きました。次回はAI回、『議事録から抜け漏れをなくす仕組み』を書きます。

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