「ダメ出し」では伝わらない|SBIモデルで部下が腑に落ちるフィードバックの作り方

「もっと真剣にやって」「やる気が見えない」「もう少し丁寧に」――こうしたフィードバックを部下に伝えたとき、相手の表情がスッと曇ったことはないでしょうか。

伝えたいことがうまく伝わらず、むしろ関係がギクシャクする。これはフィードバックの”型”を持っていないことが原因です。

中原淳『フィードバック入門』(PHPビジネス新書、2017年)でも、フィードバックは「成長を促すための情報伝達」と再定義されています。感情のぶつけ合いではなく、相手の行動変容につなげるための技術。

何を隠そう、私もドンピシャでこのミスをおかしました。「目指す場所に対してまだまだ実績が足りていない!」なんて話を得意げに1on1ミーティングで話したことがあります。

今思えば、その部下のことが細部まで見えていないのにも関わらず結果のみを見てえらそうにジャッジしてしまった。そしてこれは私に関しては恐ろしいことにマネジメントの知識もしっかりとつけ始めて自信を持ち始めてきた頃に起きました。

経験を積めば、なんとなく部下が動けているのか、周りと噛み合っているのかがわかるようになってきます。そこで中途半端なその部下の情報をもとに注意やアドバイスをしてしまう。

しかしながら、部下の情報が不足している中での感覚メインのフィードバックなので響かない。

ではどうすれば良いのか?

今回は、現場で使える具体的な型として米国Center for Creative Leadership(CCL)が提唱した「SBIモデル」を紹介します。

なぜ「ダメ出し」は伝わらないのか?

そもそも、こちらが伝えたいことが伝わらない最大の理由は、「主観のぶつけ合い」になっているからです。

「もっと積極的に」「やる気が見えない」「もう少し丁寧に」――これらはすべて抽象的な評価。

部下からすると、「具体的にどの場面のことを言っているのか」が見えません。だから「言い方が悪いだけで、自分は頑張っている」と感じ、防御的になります。

SBIモデルとは

米国のCenter for Creative Leadershipが提唱した「SBIモデル」は、フィードバックを3つの要素に分解する型です。

S(Situation):いつ、どこで(具体的な場面)
B(Behavior):何をしたか(観察可能な行動)
I(Impact):それがどう影響したか(事実ベースの結果)

ポイントは、相手の人格や能力を評価せず、観察できた行動と影響だけを伝えること。

悪い例と良い例

【悪い例】「最近、お客さん対応が雑なんじゃない?」

これは抽象的すぎて、相手は身に覚えがなく反発するか、漠然と落ち込みます。

【良い例(SBI)】「昨日の14時のXさんへの応対で(Situation)、確認の電話をかけ直さずにそのまま返答していたよね(Behavior)。あれだとお客さんが不安になって、後でクレームが入るリスクがあるんだ(Impact)」

具体的な場面・行動・影響まで分解されているので、相手は「あ、あの場面のことか」と理解できる。

「次の行動」までセットで伝える

SBIで終わらせず、最後に1つ加えます。それが次の行動の提案です。

「次から、不確かなことは一度確認してもらってOKだから、コールバックする運用にしよう」

このように”これからどうすればいいか”まで提示すると、フィードバックは初めて改善につながります。

ちなみに前述した私の失敗から学んでいただきたいことは、普段の承認や関係性の構築を丁寧にしておくこと、普段から部下に興味を持ち、コミュニケーションを機能させ、観察を怠らない姿勢を持ちづけていれば自然にSBIが使えます。

逆に言えば、これらを無視してSBIから入ってしまうと部下としては恐怖を感じてしまいます。

何でそんなこと知ってるの?となり

残念ながら、この人はいつも見てくれてるとはならないのです。

ポジティブフィードバックにもSBIを使う

実はSBIは、褒めるときにも有効です。「最近よく頑張ってるね」と言うより、

「昨日のミーティング(S)、Yさんが沈黙したときに、別の角度から質問を入れて場をつないでくれたよね(B)。あれで議論が止まらずに進んだんだ(I)。あのファシリテートはチームに効いてた」

このほうが、本人は何が良かったかを正確に理解でき、再現性が高まります。「褒めるとき”も”ロジカルに」――これがSBIのもう一つの威力です。

やってはいけない3つのフィードバック

① 人格否定:「だからお前はダメなんだ」――これはフィードバックではなく攻撃です。

② 一般論で逃げる:「もっと社会人として」――抽象的すぎて何も学べません。

③ 第三者経由で伝える:「Aさんが気にしてたよ」――伝言ゲームになり、誤解と不信を生みます。

これら3つは、心当たりがある人ほど要注意です。

いつフィードバックするか?

タイミングの原則は、できるだけ早く。行動から時間が経つほど本人の記憶も曖昧になり、「なんで今さらそれを?」という反発に変わります。理想は当日中、遅くとも48時間以内。

ただし、感情が強く動いている時は1日寝かせる。怒りに任せて伝えるのは絶対NGです。

まとめ

フィードバックは「主観のぶつけ合い」では機能しません。押さえるべき型は、SBI+次の行動の4要素。

✅ Situation(場面)
✅ Behavior(行動)
✅ Impact(影響)
✅ 次の行動の提案

明日以降、ネガティブな指摘をする前に、この4つに分解する習慣をつけてみてください。驚くほど反発が減り、相手の理解度が変わります。

参考文献

・中原淳『フィードバック入門――耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術』PHPビジネス新書、2017年
・Center for Creative Leadership “Talent Conversations” レポート

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